極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
創史さんが渡米してから、私は再三紫乃さんから言われていた。
兄はただの仕事でニューヨークに行っているわけではない。黒川の未来のため、人生をかけて渡米している。妻だからといって容易に連絡を取らないように。兄から連絡があったときにだけ返せばいい。と……。
その言いつけ通り、私は創史さんからの連絡があったときにのみ返事を返そうと思っていた。
しかし、この離れていた一年、創史さんからメッセージが届くこともなく、帰国するとの知らせも紫乃さん伝いに聞いただけ。
今日の食事会の席でも向こうで大変な生活を送っていたとは聞いていたけれど、本当に一度たりとも連絡はなかった。
贅沢と言われたらそれまでだ。でも、たった数分、ひと言でもメッセージを送る時間もなかったというのは疑問しかない。
要するに、私の存在は創史さんにとってその程度ということ。
「離婚だなんて訳がわからない。いったい理由はなんだ。俺に直すべき部分があるのなら努力する」
「いえ、これは私自身の問題です。私は、この黒川家には相応しくない。日々、そう感じてきました」
「そんなことはない。俺が美莉と一緒になることを望んだんだ」
食い気味に返してきた創史さんの言葉を、再び「いえ」と遮る。
「周囲も間違いなくそう感じています。創史さんだって、この家の未来を考えたら、妻は私ではなかったとお思いでしょう?」
想いを必死に言葉にしていくと、自然と胸が詰まって目元に涙が浮かんでくる。創史さんの困ったような表情が揺らいで見えた。