極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
Side Soushi
どういうことなんだ。
自分の心臓がこんなに落ち着きなく音を立てたのは初めてかもしれない。
美莉の部屋から出て書斎に戻るまで、なんとか平静を保つのに必死だった。
離婚、したい……?
彼女の言葉ではっきりと再生される光景。逸らさず真っ直ぐにこちらを見つめる大きな瞳に偽りは感じられない。
『私たち、離婚しましょう』
だけど、そんな言葉を受け入れられるはずもなく、聞き間違いかなにかかと片付けようとしてしまった。
でも、そんな不誠実な反応で返した自分を悔やむ。
美莉だって、それ相応の覚悟をもって〝離婚〟なんて言葉を口にしたはずだ。
結婚して一年。
美莉を妻として迎え入れるのは、念願かなってのことだった。
日々上書きされていく記憶の中で、美莉との出会いは不思議なことに今もはっきりと覚えている。
断片的にしか残っていない幼少期の出来事に、幼かった美莉の姿が残っているのだ。