極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~


 それは俺が小学部五年、美莉はまだ小学部に上がったばかりのときの出来事。

 黒川家の集まりで、美莉が初めてお義父様に連れられこの屋敷に来た日のことだ。

 大人たちが集まる堅苦しい席で、美莉はきっとお義父様に厳しく言われて来たのだろう。

 幼いながらに緊張して玄関を入ってきた姿は、お義父様の後ろに隠れ、物珍しそうに屋敷内を観察していた。

 それから一時間もしないうち、美莉はひとり庭園に出て遊んでいた。

 来たばかりの姿が嘘のように、モンキチョウを追いかけて走り回っている姿は印象的で、なにをしているのかと声をかけた覚えがある。

『ちょうちょうと、お友達になろうと思って!』

 そう言った無邪気な姿は、厳格な黒川家で育った俺の目に新鮮に映り面食らった。

 追いかけていたモンキチョウの豆知識を話すと、美莉は興味を持って質問をし、次々と話は膨らんでいった。

 子どもだった自分にとっても退屈だった時間は、慕ってくれる美莉と過ごすことで充実した。キラキラした目をして、楽しそうに一緒にいてくれるのが嬉しかった。

 それを機に、年に数度、彼女が訪ねてくるのが楽しみになった。

 そんな時代もあっという間に過ぎ去り、中等部に進学するとすっかり美莉と会う機会はなくなった。

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