極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~
翌朝──。
気が付くと書斎のチェアで眠っていたらしく、「創史様」という秘書の呼びかけで目を覚ました。
俺との連絡が妙なタイミングからつかなかったため、心配してやって来てくれたようだ。
秘書の瀬名垣倖一とは、もう十数年来の長い付き合いになる。
黒川の後継者として本格的に学び始めた十代後半から俺に付いてくれ、ビジネスでもプライベートな場面でも優秀なサポートをしてくれる信頼すべき男。
「帰国疲れのところ、書斎で寝落ちでは疲れも取れないのではないですか」
気遣いと、注意と、両方を感じさせる言い方は、長年付いてくれている瀬名垣だからこそ。周囲にいる関係者でも、彼以外はこんな風に話してはくれない。
「ああ……そうだな」
「ですが、ご事情がご事情なので、仕方ありません」
そう言った瀬名垣は、「とにかく、ご無事でなによりです」なんて言う。
「ほんとだな。昨夜は自分でもなにをするかわからなかった」
さらりとそう答えると、瀬名垣は一瞬ぎょっとしたような表情を見せる。
「ご冗談を……」