極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~


 ひまりは、出会った頃からこうして遠慮なく率直に意見してくれる貴重な存在。

 財閥の分家の娘として生まれ育った私、黒川美莉──旧姓、桜庭(さくらば)美莉は、幼少期から交友関係には悩むことも多かった。

『桜庭家のご令嬢』

 それは、近寄りがたく敬遠される存在。

 桜庭家は、日本トップと言われる黒川財閥と、代々共同事業を行うほどの名門財界一族。

 幼少期から親に決められた幼稚園に通い、小学校から高校まで私立学校に通った。この頃はまだ家柄同士の繋がりで交友関係も然程悩むこともなかったものの、大学に入ってからは幼い頃には感じなかった人との距離を感じるようになった。

 初めは、同級生たちの輪に入れない意味がわからなかった。

 話しかけてもあまり会話が発展しない。遠慮がちで盛り上がらない。

 それをどうしてなのかと聞いたとき、一度『住む世界が違うからだよ』と言われたことがあった。

 桜庭家のご令嬢というだけで住む世界が違う。普通に付き合えない。そんな風に思われるなんて思いもしなかった。

 そんな中で、唯一私のことを色眼鏡で見なかったのがひまりだった。

 誰にでも同じように接して、相手によって態度を変えない。そんなひまりに好感を持った。

 ひまりはサバサバとしていてはっきり物を言うタイプで、話していると私が心の内で思っていることをよく言語化してくれる。

 小学校時代から水泳と柔道に打ち込んでいたというひまりは、私の知る中では一番がっちりとした逞しさのある女性で、ショートボブの髪型とボーイッシュなファッションは出会った頃から変わらない。

 昔一度、ひまりに憧れて胸下まである髪を切ろうとしたけれど、ひまりに『美莉はロングヘアの前髪ぱっつんが似合うし可愛いよ』と言われて断念した。

 そうやって、ちゃんと私の言ったことに良い悪いをはっきり意見してくれるからついなんでも相談してしまう。

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