極上シークレットマタニティ~黒川家がまだ知らない、たったひとりの跡継ぎ~


「日に日に思うの。やっぱり、うちが黒川から離れることになって、創史さんも私との結婚は結局失敗だったんだって、そう思ってるのかなって」

「それって、美莉のお父様が事業から手を引いた話ってこと?」

「そう。結局、父が任されていた事業も、今は責任者が代わって進められているんだけど……」

 もう二年ほど前のこと、今は亡き私の父を代表責任者とする新規事業の計画があった。

 黒川財閥主導の、大規模ウォーターフロント再開発プロジェクト。

 最先端の都市モデル、スマートシティ開発。狙いは安全安心かつ、現代的で便利な都市をつくるという事業だった。

 しかし、父はこの新規事業に技術、倫理両面で強い懸念を示した。

 人の流れや購買、生活データを完全掌握する都市。

 至る所にある監視カメラ、キャッシュレス決済や交通履歴、医療や教育のデータまですべてが統合される。

 そこに住めば、便利の裏でプライバシーが実質消える。当時父は『これは最先端都市ではなく、管理装置だ』と反対した。

 その結果、このスマートシティ開発を推し進めたがっていた他の代表責任者候補らは、父の存在を煩わしく思っていたのだろう。

 周囲は父を引きずり降ろし、父は計画から排除された。

 この件で、桜庭家は失脚。見事に没落していった。

 私と創史さんの婚約は、この共同事業を前提に、事業開始の一年ほど前に決まっていた。そのため、父は私の立場が危うくならないかと心配をしていたのだ。

 父の主張はもっともだと思ったし、もしそれが理由で婚約が破棄となれば仕方ないことだと覚悟はしていた。

 しかし、創史さんは私との婚約を取りやめることはしなかった。理由について多くは語らなかったけれど、私と共に人生を歩む道を選んでくれた。だから、そこに愛があるのだと思っていた。

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