一夜限りの恋だったはずなのに、最強総長は息子ごと私を離してくれない。
そして――。
『もう、帰るのか?』
「……違う」
私は小さく首を振った。
「違う……」
あの人じゃない。
ここにいるはずがない。
そう思いながらも、無意識にハンドルを強く握っていた。
「……夏樹」
後部座席を見る。
夏樹は何も知らず、静かに眠っている。
「大丈夫」
自分に言い聞かせる。
「ママがいるから」
信号が青に変わる。
私はアクセルを踏んだ。
もう二度と会わない。
そう決めた人の名前を、心の中で繰り返しながら――。
「……玖珂、哉太さん」
その名前を口にした瞬間。
胸の奥が、痛いほど締めつけられた。