一夜限りの恋だったはずなのに、最強総長は息子ごと私を離してくれない。
第2章 見つからない女
―哉太―
杏奈を探している。
ただ、それだけだった。
「お前らは先に戻ってろ。あとで送迎の連中にも、俺から連絡する」
「分かりました」
「何かあったら連絡ください」
「ああ」
部下たちを見送ると、俺は自分の車へ乗り込んだ。
エンジンをかけ、ハンドルを握る。
「……どこにいるんだよ」
吐き出した声は、車内に虚しく響いた。
あの日から、何度同じ問いを繰り返しただろう。
電話番号も知らない。
住所も知らない。
俺が知っているのは、彼女の名前と、あの夜のことだけだった。
「……高瀬杏奈」
名前を口にするだけで、あの夜の記憶が蘇る。
忘れられるはずがなかった。
あの夜は、俺にとっても一生忘れられない夜だった。
なのに――。
翌日から、杏奈は俺の前から姿を消した。
連絡を取ろうにも、手段がない。
探そうにも、手掛かりがない。
こんなことは初めてだった。
俺が本気で会いたいと思った相手に、会うことすらできないなんて。
「……ふざけんなよ」
苛立ちに、ハンドルを握る手に力がこもる。
俺のことなんて、もう忘れたのか。
それとも――。
「……別の男でもできたか?」
口にした瞬間、胸の奥がざらついた。
想像するだけで、腹が立つ。
だが、杏奈が今どこで何をしているのか、俺には知る術がなかった。
「……っ、くそ」
俺はシートに深く背中を預け、目を閉じた。
あの夜、彼女は何を考えていたのだろう。
俺との時間を、どう思っていたのだろう。
遊びだったのか。
それとも、俺と同じように――。
「……会いてぇ」