一夜限りの恋だったはずなのに、最強総長は息子ごと私を離してくれない。
その瞬間。


眠っていた夏樹が、小さく声を漏らした。



「……ふぇ……」



「……起きた?」



杏奈が慌てて背中を撫でる。




「大丈夫。ママここにいるよ」




その言葉に。



哉太の表情が、わずかに変わった。



「……ママ?」



杏奈は、息を呑んだ。



「……はい」



「お前が……母親なのか?」




「……そうです」



哉太は、黙ったまま杏奈を見つめる。




そして――。




その視線が、夏樹へ向けられた。




「……父親は?」



「……」



答えられない。



「杏奈」



「……」



「父親は、誰だ?」



夜の静寂の中。



その問いだけが、やけに大きく響いた。



杏奈は夏樹を抱きしめる腕に、力を込めた。



「……関係ありません」



「……何?」



「あなたには、関係ありません」



哉太の目が細くなる。



「……そうか」



低い声。



けれど、その表情には何か引っかかるものがあった。




杏奈は知らない。




この再会が――。




自分が守ろうとしていた秘密を、少しずつ暴いていく始まりになることを。



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