一夜限りの恋だったはずなのに、最強総長は息子ごと私を離してくれない。
渡は頭を下げたものの、その表情は変わらない。



哉太は椅子に深く腰を下ろした。



「高瀬杏奈について調べろ」



「どこまででしょうか」



「全部だ」


短い言葉だった。



「今どこに住んでるのか。仕事は何をしているのか。家族はいるのか」




そこで、哉太は一度言葉を止める。




「あの女が……今、どうしてるのか知りたい」



「承知いたしました」




「それと――」 



哉太は少しだけ眉を寄せた。




「あの日、俺と別れたあと何があったのかも調べろ」 




「かしこまりました」



渡はそれだけ答えると、静かに部屋を出ていった。



「……杏奈」




誰もいなくなった部屋で、哉太はもう一度その名前を呟いた。



あの夜。



彼女は自分の前から消えた。





理由も告げずに。


 


それが、ずっと引っかかっている。
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