外れ夫と結婚したのに、気付けば憧れの愛され妻と呼ばれていました
父は珍しく上機嫌で、こけた顔に満面の笑みを浮かべていた。
『ふたりに縁談があるんだ。とてもよい話でどちらも雪丸運輸への投資を検討してくれている。ひとりは有名企業のCEOで……』
『えっ、見せて!』
お見合い結婚に乗り気ではなく、躊躇いを覚えた沙絵に対して、杏華は強い関心を示した。
素早い動きで父から釣書を奪い取り、その場で封筒から写真を取り出す。
写っていたのは、横目で見ていた沙絵も驚くくらい眉目秀麗な男性だった。
西洋人のように彫が深く秀逸な彫刻のように整った造作ながら、カメラをまっすぐ見つめる目には写真でも伝わる力強さがあった。全身写真はモデル並みのスタイル。
ビジュアル重視の杏華の目がたちまち輝き『彼とは私がお見合いする!』と迷いなく叫んだ。
友崎家内では昔から、あらゆる場面で杏華の意向が優先される。結婚に関しても例外ではない。
そのため、沙絵には杏華が選ばなかった方の釣書が回ってきたのだった――
写真に写る男性は、上品で優しそうな顔をしているけれど、姉のお見合い相手のような際立った美しさはない。
(それなのにどうして気にするんだろう?)
沙絵は戸惑っていたが、ふと気付いて顔をこわばらせながら姉を見つめた。
「まさか、ふたりとお見合いしたいと思ってるの?」
常識的では考えられないが、欲張りな杏華ならあり得る。
「なに馬鹿なこと言ってるの? お見合い相手を交換しろって言ってるのよ」
「交換?」
沙絵は思わず呆れた声を上げた。
(馬鹿なことを言っているのはどっちなの? お見合い相手をお菓子や服と同列に考えるなんて……)
「いいから、さっさと渡しなさい」
杏華は乱暴に沙絵の釣書を奪い取り、自分が持っていた釣書を乱暴に押し付けた。
彼女の中では交換が決定事項で、沙絵の意見など関係ないのだ。