外れ夫と結婚したのに、気付けば憧れの愛され妻と呼ばれていました
本音を伝えるのは難しい。
それでも蒼真の表情が緊張から喜びに変わっていくのを見た瞬間、伝えてよかったと思った。
胸の奥から喜びが溢れ出す。
「ありがとう」
蒼真の笑顔は、これまで見ていたどの笑顔よりも輝いていた。
目が合い微笑合うと、気恥しいのにそれ以上に嬉しい。
少し前まで緊張感が漂っていた部屋が、今では温かな空気に満たされていた。
蒼真がゆっくり席を立ち、沙絵に近づいた。
彼は視線を合わせるように膝を着くと、沙絵の手を優しく包む。
「俺は沙絵が好きだ。他の女に興味なんてない。この気持ちは揺らいだりしない自信がある。だから他の誰かの言葉は信じるな」
「蒼真さん……」
こみ上げる物を感じて、沙絵は声を震わせた。
蒼真は杏華の嘘で傷ついていた沙絵を安心させるのと同時に、今後二度と同じことが起きないように言葉にしてくれているのだ。
「わかった。蒼真さんを信じる」
「ああ。俺は絶対に裏切らない。一生沙絵だけを守る」
誓いのような言葉に、沙絵の胸は熱くなった。
抑えていた彼への思いが、燃え上がっていく。
涙を滲ませる沙絵を蒼真が優しく見つめる。彼の手が柔らかく頬を撫でる。
自然な流れで唇が重なった。
反応を窺うような優しいキスが、次第に熱を帯びていく。
椅子に座ったままキスを受け止める沙絵の耳に、どきどきと激しく脈を刻む自分の心臓の音が響く。
思考が段々とあやふやになり、蒼真のことしか考えられなくなっていった。
気付けば蒼真に体を持ち上げられて、きつく抱き合う形になっていた。
力強い腕に囲われ彼の広い胸に隙間なく抱き寄せられてお互いの鼓動を感じる。
キスは激しさを増し深いものに変わっていた。
沙絵はこんな濃厚なキスをするのは初めてで、体から力が抜けてしまう。支えられていなければ、自分では立っていられないほどだった。
濃密な時間がどれほどたったのだろうか。蒼真がゆっくりと唇を離した。
彼は沙絵の耳に唇を寄せて切なく囁く。
「このまま俺のものにしたい」
それは許しを請うようでありながらも、逆らいようがない強引な誘いだった。
沙絵はもう蒼真から離れたくないと思ってしまっているのだから。
それまで殆ど変化がなかったふたりの距離が、今一気に近づこうとしている。
急展開に動揺が隠せない。でもそれ以上に、もっと彼を感じたかった。
「私も離れなくない」
素直な気持ちを伝えた次の瞬間、蒼真に抱き上げられた。
彼は沙絵を自分の部屋に運び、ベッドに横たえて、深いキスをした。
「すっとこうしたかった」
彼は沙絵に触れながら、切なく囁く。その声は不思議なほど深い実感が込められているように聞こえた。
「愛してる」
なぜ、彼がこんなに沙絵を想ってくれているのか分からない。
けれど、彼の気持ちが本当なのは、痛いほど伝わってきた。
蒼真に優しく激しく抱かれ、沙絵は幸せを噛み締めたのだった。