外れ夫と結婚したのに、気付けば憧れの愛され妻と呼ばれていました
6 守る人
沙絵との同居をはじめて数日後の正午。
仕事に区切りがついたので昼食に出ようとしたタイミングで、理玖がやってきた。
「休憩か?」
「ああ、食事をしてくる」
蒼真には専属秘書が付いているが、昼食の準備などは任せていない。取引先との会食がある場合は別として、通常はその日の気分で適当に選んだ店で取っている。
理玖は蒼真の執務机の上に書類を置き、思い出したような顔をした。
「そう言えば沙絵さんと一緒に住みはじめたんだったな。愛妻弁当はないのか?」
「ない」
蒼真は短く答えた。
「沙絵さん、料理はあまり得意じゃないのか?」
「彼女も働いていて忙しいんだ。俺の食事の世話をしている暇はない」
実は弁当どころか、朝食と夕食も別に取っているから手料理など食べたことはない。
理玖には話していないが、現状は未来の夫婦というより割り切ったルームメイトだ。
蒼真としては一緒に食事を取り会話を重ねてお互いの理解を深めたい。
もっと関係をよくしたいが、沙絵に同居を承諾させるためには“お互い干渉しない”という条件を付けるしかなかったのだ。
自分にとって不利になる条件だと分かっていたが、別居よりはルームメイトの方がましだと思った。
同居していれば、なし崩し的に共同作業が増えるだろうと期待をしていた。
ところが沙絵は非常にきっちりとした性格で、蒼真との間に明確な線を引いた。
一緒に食事をしたい、なんて気軽に声をかけられる雰囲気ではない。
なるべく優しく接して、自分の好意が伝わるように努めているが、今のところまったく気づかれていない。
蒼真が在宅中の沙絵は自室に閉じこもっていることが多いし、ときどき共用スペースで顔を合わせても、まるで秘書がするように蒼真に丁寧な気遣いをする。
おそらく彼女は蒼真が見合いの席で言った言葉を記憶し、心に刻んでいるのだ。
『そういうわけで、この縁談は俺にとって仕事でしかない。どうやら君には片思いの相手がいるようだからお互い割り切れそうだな』
あのときは沙絵に片思いの相手がいると聞き、ショックのあまり動揺してしまったのだ。
想う相手がいるのか素直に聞けばよかったものの、プライドが邪魔をして強がってしまった。
沙絵は間に受けて、この結婚をビジネスだと受けてとめている。
蒼真にとって非常に厄介な状況になってしまった。
今となっては愚かだった当時の自分を殴り飛ばしたい。
(あんなこと言うべきじゃなかった)
蒼真が後悔に苛まれていると、理玖の気軽な声がした。
「でも愛妻弁当ってなんか憧れないか?」
(まだその話題なのか?)
好きな人の手による料理は正直言って憧れている。でも口に出せるわけがない。
自業自得なのだから。
「別に。そんなことは望んでいない」
「もしかして、うまくいってないのか?」
「うるさい」
蒼真は素っ気なく言い、執務室を出た。
理玖が慌てて着いてくる。
「そう落ち込むなって。夫婦仲がよくなる方法を考えてやるから」
「まだ夫婦じゃない」
「すぐになるだろ?」
(そうだといいが)
実は蒼真が一番入籍の日を待っているのかもしれない。
仕事に区切りがついたので昼食に出ようとしたタイミングで、理玖がやってきた。
「休憩か?」
「ああ、食事をしてくる」
蒼真には専属秘書が付いているが、昼食の準備などは任せていない。取引先との会食がある場合は別として、通常はその日の気分で適当に選んだ店で取っている。
理玖は蒼真の執務机の上に書類を置き、思い出したような顔をした。
「そう言えば沙絵さんと一緒に住みはじめたんだったな。愛妻弁当はないのか?」
「ない」
蒼真は短く答えた。
「沙絵さん、料理はあまり得意じゃないのか?」
「彼女も働いていて忙しいんだ。俺の食事の世話をしている暇はない」
実は弁当どころか、朝食と夕食も別に取っているから手料理など食べたことはない。
理玖には話していないが、現状は未来の夫婦というより割り切ったルームメイトだ。
蒼真としては一緒に食事を取り会話を重ねてお互いの理解を深めたい。
もっと関係をよくしたいが、沙絵に同居を承諾させるためには“お互い干渉しない”という条件を付けるしかなかったのだ。
自分にとって不利になる条件だと分かっていたが、別居よりはルームメイトの方がましだと思った。
同居していれば、なし崩し的に共同作業が増えるだろうと期待をしていた。
ところが沙絵は非常にきっちりとした性格で、蒼真との間に明確な線を引いた。
一緒に食事をしたい、なんて気軽に声をかけられる雰囲気ではない。
なるべく優しく接して、自分の好意が伝わるように努めているが、今のところまったく気づかれていない。
蒼真が在宅中の沙絵は自室に閉じこもっていることが多いし、ときどき共用スペースで顔を合わせても、まるで秘書がするように蒼真に丁寧な気遣いをする。
おそらく彼女は蒼真が見合いの席で言った言葉を記憶し、心に刻んでいるのだ。
『そういうわけで、この縁談は俺にとって仕事でしかない。どうやら君には片思いの相手がいるようだからお互い割り切れそうだな』
あのときは沙絵に片思いの相手がいると聞き、ショックのあまり動揺してしまったのだ。
想う相手がいるのか素直に聞けばよかったものの、プライドが邪魔をして強がってしまった。
沙絵は間に受けて、この結婚をビジネスだと受けてとめている。
蒼真にとって非常に厄介な状況になってしまった。
今となっては愚かだった当時の自分を殴り飛ばしたい。
(あんなこと言うべきじゃなかった)
蒼真が後悔に苛まれていると、理玖の気軽な声がした。
「でも愛妻弁当ってなんか憧れないか?」
(まだその話題なのか?)
好きな人の手による料理は正直言って憧れている。でも口に出せるわけがない。
自業自得なのだから。
「別に。そんなことは望んでいない」
「もしかして、うまくいってないのか?」
「うるさい」
蒼真は素っ気なく言い、執務室を出た。
理玖が慌てて着いてくる。
「そう落ち込むなって。夫婦仲がよくなる方法を考えてやるから」
「まだ夫婦じゃない」
「すぐになるだろ?」
(そうだといいが)
実は蒼真が一番入籍の日を待っているのかもしれない。