外れ夫と結婚したのに、気付けば憧れの愛され妻と呼ばれていました
祖父母を交えて蒼真と話し合った結果、沙絵と双子は東京に引っ越しをすることになった。
今の蒼真のマンションは子供が暮らすのには少々不便なため、新たな家を用意するとのこと。
蒼真は祖父母も一緒に来てはどうかと提案したが、まだ健康なうちは住み慣れた町で暮らしたいとやんわりと断られた。
沙絵は契約社員として勤務しているタクシー会社の仕事などもあり、後から東京に戻ることになった。
一カ月後。沙絵は双子と共に東京の新しい住まいに移った。
蒼真が用意したのは、ラグジュアリーマンションのペントハウス。二百平米を超える家族四人で暮らしても十分なゆとりがある間取りの部屋だ。
「庭で遊べるように一戸建てがよかったんだけど、ちょうどいい物件が見当たらなかった。子供たちが成長するまでによい土地を探そう」
蒼真が残念そうに言うが、沙絵には十分すぎるほど満足な新居だった。
「ここで十分すぎるくらいだよ。聡志と泉美が大きくなって部屋を別にしたとしてもまだ余裕があるし。近くに病院や幼稚園もあって環境もいいし」
蒼真が慎重に選んでくれたのが分かった。
「沙絵が気に入ったのらよかった。聡志と泉美はどう思ってるんだろうな」
蒼真が足元で遊んでいる子供たちに目を向ける。ふたりとも新しい環境に戸惑うことはなく、ご機嫌の様子だがパパの視線に気づいたのか顔を上げて、キャッキャと笑い始めた。
蒼真の整った顔がくしゃりと緩む。世間ではやりてのCEOも我が子には適わないようだ。
その夜、沙絵は腕を振るって新居で初めての料理をした。
「美味しい、さすが沙絵だ」
「まんま!」
「まーまー」
蒼真に釣られたように双子が声を上げる。
沙絵は胸が温かくなるのを感じた。
(蒼真さんが迎えに来てくれてよかった)
彼が諦めないでくれたから、こんなに幸せになれたのだ。
双子の食事のフォローをしていると、外でどんと大きな音がした。
「なんだろう」
ペントハウスの窓の向こうに目を向けた習慣、輝く花火が夜空を飾った。
「そういえば、今日は花火大会だったな」
蒼真が思い出したように呟いた。
「あーあー!」
双子たちが興奮して声を上げる。
「綺麗だね……引っ越ししてきた日にこんなに綺麗な花火が見られるなんてついてる」
「そうだな。前向きに俺たちを祝福してくれているのだと思おうか」
「そうだね。これからの暮らしがよいものになるように」
鮮やかに輝く夜空を、沙絵は希望に溢れながら楽しんだのだった。