マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

「で、でも……会うとか、そういうのは……ハードルが高い、っていうか……」
「何言ってんの。お互いやり取りして、顔も知って、電話もして。もう会うしかないじゃない」

自分の言ったことにうんうんと納得したように頷く結衣。

「あ、いや……顔知らないし、電話も……したことがないの」
「はぁっ!?」

私がそう告げると、結衣が大きな声を出して驚く。
食堂にいる人達の視線が集まり、顔が熱くなった。

「ゆっ……結衣っ」

慌てて結衣を収めると、大きなため息を吐かれた。

「初花もだけど、相手もっ。何やってんの……!?」
「そ、そんなに驚くこと……? その、普段はメッセ―ジとか、写真とか……」

そう話していると、ブブッとスマホが振動して画面に彼からのメッセージが届く。
結衣が話しているから、返事はできない。
でも、何が来たのか気になる。
そう思い、画面に視線を落とせば、またため息を吐かれる。

「……返事、したら?」
「ごめん」

一言詫びてから画面を開くと、人懐っこい猫の腹を撫でている写真。

『公園にいた猫』

そう書いてある。
紺のスーツから伸びる角ばった大きな手からは、猫への愛情が伝わってくるような優しいもの。
(あっ……この猫……)
この猫は見たことがある。
会社近くにある公園にいる人懐っこい猫で、私も一人でお昼を食べる時は見かけて触ることがあるからだ。
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