マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

『その猫ちゃん、朝日公園じゃないですか?』
『知ってるんですか?』
『はい。私もたまに、癒されてます』
『可愛いですからね』

彼とのやりとりを繰り返していると、つい「ふふっ」と笑みが溢れる。

「ちょっと、初花。画面見ながら笑わないでよ」
「ご、ごめん……」

ジトッとした目で見られて言われると、気まずくなった。

「ね。今日の夜とか電話しませんか? って誘ってみなよ」
「そ、そんなっ……わ、私……ちゃんと話せる自信なんて……」
「あのさ、マッチングアプリって出会いを目的としてんの。電話もしない、会いもしないってなったら、そのうちフェードアウトされて連絡来なくなるかもよ? 良いの?」
「うっ……」

良くない。
答えは決まっていた。
まだ、一ヶ月しかやりとりはしていないけれど、彼との些細なやりとりが心の落ち着きにつながっているのは事実。
直接話したこともないのに。
文章と写真から、彼の人となりが伝わる気がした。

「あと、会う前には写真も交換しときなよ。怖いでしょ? どんな人か分からないと」
「う……それは、ハードルが……」
「初花……」

呆れたようにため息を吐かれる。

「アンタは可愛いから! 大丈夫だって」
「うぅ……」

結衣に背中を押されても、私は毛先を指に絡める癖で逃げてしまうだけだった。

「とりあえず、連絡してみな? 電話しませんかって」
「わ……分かった……」

手が震えながらもフリック入力で文字を並べた。

『いきなりですみません。もしよろしければ、近いうち電話しませんか?』

送信したけれど、昼休憩の間に連絡が返ってくることはなかった。
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