マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
(や。でも……たまたま、かもしれないし)
そんな期待を込めて、もう一度入力をした。
『黒い服って、パーカーとかですか? シャツですか?』
送れば、またすぐに既読がつく。
『パーカーだよ。分かりやすいかなって。近くにいるなら、迎えに行こうか?』
そう返事が返ってきて、彼が視線を上げてキョロキョロと辺りを見渡している。
気付かれない距離感ではあるが、サッと身を隠した。
やはり、彼がSOMAのようだ。
よく考えたらSOMA……そうま……颯馬。
名前をそのまま使っているのだから、彼に非があるわけではない。
まさか、マッチングアプリで同じ会社の有名人と会う約束をしてしまうなんて……。
というより、どうして鷹岡さんがマッチングアプリを……!?
彼の周りには、常に美女がいる。
出会いなら、その辺に転がっていそうなのに。
私はそっとスマホを下ろした。
「っ……ごめんなさいっ……」
もちろん、彼に聞こえるわけがない。
けれど、言わずにはいられなかった。
だって、私ーー今からバックれるんだもの……!
彼の視界に入らないよう、身を隠しながら公園の外へ出た。
営業部には、華やかで近寄りがたいという印象しかない。
もし、彼が営業部の人に私とマッチングアプリで知り合ったなんて面白おかしく言おうものなら、私の会社での居場所は……なくなってしまう。
それが怖くて、私はSOMAさんを裏切った。