マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「さっきの猫、朝日公園の?」
「っ、はい。ちょうど猫が来てくれて、可愛くて」
いつもと変わらない彼に、以前と変わらない様子に安堵した。
足元で甘える猫の首元を指で撫でるほどの余裕も出てきた。
「そう。それならちょうどよかった」
「え……?」
言っていることが分からず、小首を傾げた。
同時に、背後からザッと砂を踏む音が聞こえ反射的に振り返った。
耳にスマホを当てている鷹岡さんだ。
「波田、さん?」
「た……鷹岡、さん」
少し目を見開いている彼と目が合う。
まさか、相手が私だと思わなかったのだろう。
というか、私の名前……知ってるんだ。
それにも驚いた。
彼がスマホの通話ボタンを消して、スマホをポケットに入れた。
「まさか、俺をバックレたRUIさんが波田さんだったとはな」
「っ……あ、えと……」
声は、電話の時とさほど変わらない。
けれど、その表情は――いつも会社で見かける凛としたもので、この距離で見るのは、威圧感がある。
先ほどまできちんと出ていた声も、喉がきゅっと締まって出にくくなる。
体が強張って固まってしまうけれど、彼はそんな私の様子に気づいたのか、立ったまま見下ろすことはせず、少し距離を空けて私の隣にしゃがんだ。