マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「あ、あの……」
直接会って、身バレしたからこそきちんと謝らないといけない。
そう思うけれど、緊張もあって上手く声が出ない。
「……俺、そんな怖い?」
眉をひそめて、言いにくそうに聞いてくる。
私は小さく首を横に振った。
「さっきまで普通に電話してたのに」
「そ、それは……」
あの日、鷹岡さんだと分かった上で逃げたのに、どんな顔をして話すというのだろうか。
「でも、波田さんで良かった」
「え……それって……?」
どういう意味か――そういうつもりで尋ねたつもりだったが、彼はニヤリと口角を上げていた。
何か企んでいるような表情に見えた。
「バックレってさ、あのアプリではかなりアウトなご法度だって知ってる?」
「えっ……!?」
彼の言葉にぱちぱちと瞬きが増える。
悪質な利用者として通報される可能性があるなんて知らなかった。
そもそも、人としていけない行為とは理解しているつもりではある。
「でも、俺も面倒なのはごめんだからさ。ひとつ、頼みを聞いてくれない?」
「頼み……?」
このようなことをしているのだから、詫びを入れる必要がある。
何を頼まれても、できる限り応えようと思った。
けれど――。
「付き合ってくれるフリしてくれるなら、通報しないよ」
まさか、こんなことを言われるとは思わなかった。