マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「てか、偉いよね。毎日お弁当作ってるなんて」
結衣が席に着いて、私のお弁当をじっと見つめながら言う。
彼女は、同期入社の社員でもう二年以上私のお弁当を見ているのに、改めて言ってくれる優しい子だ。
「そんなことないよ。大学生の頃からやってるから、もう慣れちゃった」
「あたしなら、お弁当を作ったら自慢しまくるって。まぁ、続かないからこのワンコイン定食を食べるんだけどね~」
あはは、と笑いながらそう言うとご飯を食べ始める。
今日の日替わり定食は、生姜焼き定食。
ご飯、生姜焼き、お漬物、お味噌汁。
ボリュームがあって、濃い目に味付けをされていそうなそれはとても美味しそうである。
けれど、物価高でもワンコイン――五百円で提供してくれるそれを見ても『高い』と思ってしまう。
私がここまで節約するのは、趣味にお金を使いたいからというのもある。
けれど、一番の理由は――女手ひとつで育ててくれた母への恩返しだ。
苦労する母の背中をずっと見てきたし、大学の学費に加えて家賃もずっと払ってくれた。
だから、今度は私が恩返しをしたいという気持ちからである。
お弁当を食べ進めていると、ブブッとスマホが振動した。