マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
『お金、ありがとう。いつも言っとるけど、お金送らんでいいよ。東京は色々高くて生活大変やろ』
スマホの画面を確認すると、母からメッセージが届いている。
私は給料日に、母の口座へ毎月三万円送金されるようにしている。
そして、送金されるたびに母からメッセージが届く。
『そんなことないよ。平気だから』
そう返信をすれば、すぐに既読がついてまたブブッと振動する。
『ところで、誰か、いい人おらんの?』
「はぁ……」
母から送られる二つ目のメッセージに思わず大きくため息を吐いた。
近年は晩婚も珍しくないというのに、母にはそんな世間の流れなど関係ないらしい。
二言目には、決まって結婚の話を持ち出してくる。
母自身、結婚が遅かったうえに、私が小学校を卒業する前に父を病気で亡くしている。
だからこそ、私には早く家庭を持ってほしいと思っているのだろう。
私が社会人になってから、いつも同じことを言っていた。
『女の子は結婚したら幸せになるんやけん』
『二十五歳までには結婚して、早く子どもを生みなよ』
『早めに色々と終わらせた方が、楽やけん』
この三つは、耳にタコができるほど聞かされた。
帰省した時に毎回聞かされるのだから、仕方ない。
「どうしたの?」
私がため息を吐くと、正面にいる結衣がそう尋ねてきた。