マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

帝都ホテル。
明治時代から続く、港区の老舗高級ホテル。
国内外の要人を迎える場としても利用されてきた、格式高い場所である。
格式の高い場所で、私のような一般人では一生縁のない場所だと思っていた。
さて、このように言えばまるで私がこの空間にいるようだけれど、いる。
もちろん、私一人でこのような場所にいられるわけがないのだけれど――。

「颯馬さん。お付き合いされている方がいらっしゃるなら、もっと早く紹介なさいよ。まったく、将来会社を背負う立場としての自覚はお持ちなの?」

丸いテーブルを四人で囲む。
私の正面に座るのは、鷹岡さんのお母さん。
上品な話口調で、上質な淡いベージュの着物を着こなし、扇子で涼しい顔を煽っている。
流し目で高岡さんを見るが、その目は鋭い。
彼の凛とした目元にそっくりである。

「まぁまぁ。良いじゃないか、今日は堅苦しい場ではなく、お付き合いされている方を紹介してくれるというのだから。初花さん、これからも颯馬と仲良くしてください。会社でも頼むよ」

そんな女性を牽制するのは、夫である鷹岡さんのお父さん。
二人とは異なり、穏やかな表情であり、私はこの人を見たことがある。
この人――私と鷹岡さんが勤める華蘭製薬会社の専務である。
この場に来て知ったのだが、彼は――いわゆる御曹司というものらしい。
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