マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

「ところで、初花さん」
「は、はいっ」

パチンと扇子を畳むと、お母さんの視線が私に向く。
ほとばしる緊張感に、ビクッと体が反応する。

「あなた、結婚についてはどのように考えていらっしゃるの?」
「け、結婚……」

このような場に来れば、当然出る話だろう。
けれど、すぐに答えられない理由がある。
私と彼は、本当は付き合っていない。
付き合っているフリをしているだけである。
あの日――私が鷹岡さんに身バレしてしまった日から二週間しか経っていないのだが、両親には、作り上げた馴れ初めを話している。

「母さん、やめてください。そういうことをすぐに聞くと思ったから、今まで紹介をしなかったんです」
「すぐって何よ。お付き合いして二年でしょう? 結婚の話が出るのは当然だと思うけれど?」

私と彼は、付き合って二年――という設定だ。
私が入社した時、新入社員が受ける研修に鷹岡さんがいて、研修担当になったことをきっかけに仲を深めていったというなれそめも作っている。
ちなみに、彼の一目ぼれで、私がなし崩しに付き合ったという設定もある。
これは、両親から色々とつっこまれた時に鷹岡さんが割って話に入るためということであるが――嘘にしてもおこがましすぎる設定である。
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