マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

「変に何年も付き合っているということは言わずに、日が浅いということにしておけば良かったか……。初花、休みを潰して申し訳なかった」

彼が真面目な顔をして顎に手を添えて言う。
呼び方が呼び捨てになったのも、その方が恋人らしいからというそれらしい理由だ。
ちなみに、私は颯馬さんと呼ぶようになった。

「い、いえ。もとはと言えば、私が原因なので」

二週間前にバックレたということが元凶である。

「母が親戚に会わせるという話をしていたが、その時は謝礼を用意する。俺の読みが甘かった。ただ、恋人がいるという話をすれば気が済むと思っていたのだがな……」
「えっ……!? そんな、お金が発生することは……」
「初花の時間を奪っているんだ。こういうのは、きちんとしておいた方が良い」

真面目な顔をしてそう言われると、頷かざるをえなかった。

「それと、会社には専務の父と取締役に就いている叔父がいる。申し訳ないが、もし会社で父や叔父と顔を合わせて、何か聞かれることがあったら、その時だけ話を合わせてほしい」
「わかりました」

必要な時だけ恋人のフリをする。
そんな歪な関係はこの先も続くことになってしまったのだ。
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