マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

***

あれから二週間が経過し、恋人という関係を偽装し始めて一か月が経った。
元々、社長や専務に会うということはなかったので颯馬さんが思っていたような、話を合わせるということはしなくてよかった。
颯馬さんとも会社ですれ違うことは滅多にないため、私はいつもと変わらない平穏な日々を送っていた。

「まずいな、これ……」

デスクで仕事をしていると、隣の席にいる先輩がぼそりと呟いて眉間に皺を寄せている。
ちょうど仕事のキリが良く、次の仕事にとりかかろうとしていた時だったので、先輩の方を向いた。

「どうしたんですか?」
「これ……営業部の白鳥さんの精算書なんだけど、添付する領収書を間違えてるんだよ」

先輩が見せてきた精算書を確認すると、指摘通り日付と金額が違うものだった。

「これ……プライベートの領収書と間違えたんですかね?」
「金額も違うし、そうだろうな……さすがに営業部に行く時間はない。午前中にしないといけないことがあるのに……」

話していると、先輩の目がだんだんと険しくなる。

「あっ。わ、私……行ってきます。ちょうど、キリの良いところなので」
「すまん。助かる……!」

顔の前でパチンと手を合わせて頭を下げる先輩から書類を受け取って営業部があるフロアへ向かった。
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