マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「えっと、たしか営業部は……」
華蘭本社は、港区に十階建ての自社ビルを構えている。
経理部は八階にあり、営業部は五階にある。
営業部のフロアには、普段は滅多に行かない。
というのも、書類に不備があった際の他部署とのやり取りは、結衣が担当することが多い。
そのため、私が営業部へ来たのは新入社員の時の研修でフロアを案内されて以来である。
(そういえば、営業部って一課とか二課とか分かれていた……白鳥さんってどこの所属なんだろう……)
壁にかけてある案内図と白鳥さんの書類を交互に見ていた。
「あれ? 波田さん?」
声を掛けられると、反射的にそちらへ向いた。
そこには、スーツを着た男性が三人いて、先頭にいる男性がひらひらと手を振っている。
まるで、友人に声をかけているような気さくな態度である。
けれど――。
(誰、だろう……?)
彼をじっと見つめるけれど、やはり分からない。
「忘れちゃった? 営業二課の辻村だよ」
「あっ……お、お疲れ様です」
名乗られたことでようやく思い出した。
彼は、私が研修でフロア案内をされていた時に、営業部の紹介をしていた先輩社員だ。
慌てて挨拶すれば、苦笑を浮かべる。