マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「あー……お母さんから、いつもの」
「あぁ。結婚の?」
結衣も、母から結婚を催促されていることは知っている。
こくりと頷けば、苦笑する。
結衣はずっと都内に住んでおり、母が結婚を急かす価値観を不思議に思っている。
恐らく、地方ではそんな感じなんだという程度に捉えているのだろう。
地元では同級生の結婚報告もちらほら聞くようになった。
「二十五歳だっけ? でもさ、二十五歳で結婚ってあんまり現実味がないよねぇ」
私達が今、ちょうど二十五歳。
社会人として働くまでは、二十五歳と言えば社会人三年目。
結婚をするなら、社会人三年目がちょうど良いよね、なんてネットの記事を見たことがある。
しかし、いざ自分がそれと同じ年になると――結婚なんて、まだ考えられない。
会社には慣れたけれど、部署内にはまだ先輩ばかりだし、仕事も知らないことがあるのに、結婚なんてと躊躇してしまう。
「でも、彼氏……とかは、考えた方が良いのかな」
結婚を悩む以前に、まず私達には彼氏がいない。
そして、そんなことを口にした私は、生まれてから一度も彼氏がいたことがない。
中学生の時、男子に対する苦手意識が芽生えてしまって、それ以降は常に女性が多い環境に身を置いてきた。
経理部にも男性はいるけれど、全員結婚している。
そのため、恋愛に発展することはなかった。