マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「じゃあ、どうしてそれほど急いで食べる?」
「あ、あの……」
声を小さくしてヒソヒソと話せば顔を近付けてくる。
(わ、綺麗な顔……って、そうじゃない……!)
「……その、勘違いされませんか? 営業部の人たちに」
「? 初花との関係を? 父や叔父にはそういう関係だと伝えるのだから、勘繰られてもこちらは構わない」
「そ、そうじゃなくて……その……」
私の言葉に不思議そうに小首を傾げる。
「白鳥さんと……お付き合い、されてるんじゃないんですか?」
「……どうしてそこで白鳥が出てくる?」
「えっ……だ、だって……午前中に営業部のフロアに行った時に、そんな噂があるって……それなのに、私がと、こ……恋人のフリって……」
話していると気まずくて、惨めな気がして毛先を指に巻き付ける。
すると、「はぁ……」とため息をつかれてぴくりと肩が跳ね上がる。
(や、やっぱり……呆れてる……?)
「白鳥とは仕事の先輩後輩以外の何でもない。そもそも、本当に付き合っているとすれば、マッチングアプリなんてしないし、初花に付き合ってるフリをしてくれなんて言わないだろ」
「あっ……」
颯馬さんの言葉は、たしかにと頷くに足るものだった。