マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

「うん。それは考えた方が良いでしょ」
「うっ……や、やっぱり……」

結衣は、思ったことをきちんと言える性格で、そこに憧れる。
しかし、分かっていることを改めて言われると胸にグサリと突き刺さる。

「ていうか、初花に彼氏がいたことないって信じられないんだけど」
「っ、ちょ、ちょっと結衣っ……」

日替わり定食を食べ終えた結衣が、頬杖をつきながらそう言うと、私は恥ずかしくなった。
というのも、この話題を初めてから周囲の視線が気になったからだ。
食堂の昼ピークは過ぎたものの、この時間に昼休憩を摂るのは他社とのやりとりを行い、勤務時間が不規則になりがちな営業部と企画部。
会社の花形部署と呼ばれる営業部と、会社の顔とも言われる企画部。
どちらも仕事ができそうな雰囲気をまとった、美男美女ばかりだ。
そんな人たちから視線を向けられれば――。

『お前が何言ってるんだ』

そう言われているような気がして、視線が落ちた。
恥ずかしくなって、毛先を指に絡めて顔を髪で隠すようにした。

「てか、彼氏のことは真剣に考えてるの?」
「う……それは……うん」

結衣の言葉にこくりと頷いた。
学生の頃なら、恋愛経験がないというのはウブで純情な印象を与えられる良いものになるだろう。
しかし、二十五歳にもなって恋愛経験がないことを、私は少しずつ引け目に感じ始めていた。
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