マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「別に嫌じゃない」
「へ……?」
彼の言葉が意外で、瞬きが増える。
「むしろ、頼ってくれたみたいでちょっと嬉しかった」
そう言う彼の頬は、夕日のせいか少し赤く見えた。
「それと、手は離さなくて良いだろ」
「あ……」
勢いで彼から離れたため、手も離していた。
「ん」
再度彼に手を差し出されると、ドキドキしながらもその手に重ねてぎゅっと握る。
そして、波打ち際の砂浜まで歩き出す。
波の音に心癒され、キラキラと照り返す水面に口元が緩む。
「少し聞きたいのだが」
「はい……?」
「初花、もしかしてこれまでも色々調べてたのか?」
ドキッとする。
スマホで調べていたことが、先程のことからすべて見透かされているようだ。
「う……は、はい……」
「初めての電話も?」
「は、はい……」
あの時も、手書きのメモにまとめていた。
まぁ、準備はしたけれどベッドの隙間に入ってしまって無駄になってしまったが。
「今日も?」
恥ずかしくて、無言でこくりと頷いた。
これまで、恋愛になんて縁がなかった。
それに、失敗するのが怖くて、調べて誰かの成功したという経験の手引きがなければ行動に移せる自信がないのだ。