マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「そうか。それで、か」
「へ……?」
颯馬さんが何か納得したように、繋いでいない方の手を顎に添えてぼそりと呟く。
「いや、やけに準備をしていると思って。でも、どうしてそこまで?」
「それは……私は颯馬さんの恋人役を偽装して、ご両親やこの先は親戚の方に会うので……もし、私が失敗すれば、それは颯馬さんにご迷惑をかけてしまうので」
普通の恋愛でも、失敗なんてしたくない。
けれど、今の彼との関係で失敗すれば、彼にも迷惑をかけてしまうことは理解していた。
「別に、毎回調べなくていい」
「でも……失敗したら……」
「失敗したっていいだろ。俺相手なんだから」
颯馬さんが相手だから、失敗したくない。
そう言いそうになっていた。
しかし、先に言葉を続けたのは彼だった。
「初花が何か間違えたくらいで、嫌いになったりしない」
間違えても、嫌いにならない――。
どうして、そんな風に言ってくれるのだろう。
私と颯馬さんでは、釣り合うはずもないのに。
手を繋いで、ドキドキして、舞い上がっているのは私だけな気がする。
彼は、いつもと変わらない様子。
でも、きっとそれが正しい反応だろう。
私は――マッチングアプリでの待ち合わせをばっくれて、彼の見合いを断るための口実となっているだけなのだから。
胸が妙にざわつくけれど、私は自分の気持ちにそっと蓋をすることを決めた。