マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「……本当に、それだけ?」
「えっ」
ギクリ――胸が痛んだ。
彼は、鋭い視線を向けている。
ここで下手に言葉を繋げばボロが出てしまいそうな気がして、だんまりを決め込んだ。
「いや。ならいい」
なんとか誤魔化せたようで、再度安心した。
「それと、以前母が話していた親戚も含めた食事会の日程を調整したい」
「えっ……!」
詳細を聞こうとしたら、詳細を聞こうとしたところで、タイミング悪く到着を告げる音が鳴った。
営業部のあるフロアに着いてしまい、扉が開く。
「あ、あのっ。颯馬さん」
「ごめん。続きはまた」
スマホを軽く掲げ、『また連絡する』とでも言うように手を振って行ってしまった。
「あ……」
扉が閉まった後に声を漏らしてしまい、彼には当然届かない。
(っていうか、どうしよ……! また……)
両親に会った時も緊張したけれど、親戚と会うとなればまたドキドキしてしまう。
「って、いけない……! ただでさえ寝不足なのに、こんなのじゃミスしちゃう……!」
パチン、と両手で顔を挟めばチンと音が鳴って、経理部のフロアに到着した。
短く息を吐いてしっかりと前を見つめた。