マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

***

「や……やっと終わったぁあああ……」

午後八時過ぎ。
経理部で残っているのは、私だけ。
データ入力を間違えてしまい、再度入力し直してやっと終わったのだ。

「波田さん。大丈夫? 俺、手伝うよ」

三十分前、隣のデスクで作業していた先輩がそう声をかけてくれたけれど――私がやらかしたことなのに、先輩にご迷惑をかけるわけにはいかない。

「い、いえ……! もう、終わりそうなので……!」
「そう? ほどほどにね? じゃあ、お先」
「はいっ。お疲れ様ですっ」

そう挨拶をして三十分。
ようやく終えた達成感と、フロアに自分しかいない解放感で声が漏れる。
(こんなに遅いのは、経理部に入って初めて……この時間なら、特売品もお惣菜のおつとめ品も売り切れてる……)
壁にかけている時計を見ながらそんなことを考えていた。

「はぁ……もう、本当ついてない……」

嫌な夢を見るし、颯馬さんから親戚と会うという予定を聞かされるし、とんでもないミスをするし。
今日は散々だ。
それに……。
スマホの画面を点けるけれど、やはり何も来ていない。
颯馬さんが、親戚に会う日程についてスマホで連絡をくれると思っていたが、待てど暮らせど来なかったのだ。
(うぅ……早く知りたかったなぁ……)
詳細がないというのは、それだけで不安である。
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