マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「何? ていうか、波田って昔から大人しいよな。ま、今はそんな感じだし……それなりにモテてるんだろ?」
「っ……」
首を横に振る。
モテたことなんてない。
むしろ、男の人に関わらないよう、女性の中で過ごしてきた。
昔と同じように、頭のてっぺんからつま先までジロジロと見られる。
まるで、見定めるかのよう。
グッとその場に留まるけれど、男性の力にはかなわずグイグイと引っ張られる。
(どうしよう、私、どうしたら……)
不安でいっぱいになり、ぎゅっと目を閉じると私の腕を掴んでいた圧迫感がスッと消えた。
「え……?」
何が起きたのか分からず、声を漏らしてゆっくりと目を開ける。
そこでは――颯馬さんが櫻田くんの手を掴んでいた。
「何やってんの」
ギロリと鋭く睨む颯馬さんに、櫻田くんの目が丸くなる。
「は……? お前……鷹岡、颯馬?」
「そうだが。誰だ?」
なぜか、櫻田くんは颯馬さんのことを知っているようで名前を呼んだが、颯馬さんは怪訝そうに小首を傾げた。
知り合い――というわけではなさそうだ。
「はっ……アンタに関係ないだろ。行こうぜ、波田」
「えっ……」
「関係ならある」
「は?」
櫻田くんの目つきが鋭くなるけれど、私はただその場で首を横に振ることしかできない。
すると、颯馬さんは櫻田くんの手を掴んだ手を離して、私の肩を抱き寄せた。
「俺の彼女。いじめないでくれる?」
抱き寄せられたことで颯馬さんの体に身を寄せた。