マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「彼女? 波田が?」
私と颯馬さんの顔を交互に見比べる。
(う……そりゃあ、私なんかと颯馬さんじゃ釣り合わない、けど……)
ここで、偽装恋人ということを見破られてしまえば、今度こそどうなるか分からない。
そう思うと、不安から颯馬さんのスーツをぎゅっと握った。
「そうだけど」
私が掴んだことに気付いたようで、肩を抱く力が強くなった。
「……マジで?」
まだ、疑っているようだが颯馬さんは言葉を続ける。
「あぁ。だから、もう手を出すな」
「チッ……久しぶりに会ったからちょっと話してただけだろ!」
舌打ち交じりで私を睨みつけながらそう言うと、櫻田くんは明らかに不機嫌になってどこかへ向かっていった。
「大丈夫か。初花」
櫻田くんが見えなくなると、優しい声音が頭上から聞こえて顔を上げる。
颯馬さんは、眉を寄せて悲しそうな表情を浮かべていた。
「す、すみませんっ……あっ……」
きっと、会社の前でいつまでもくっついているから……!
そう思って慌ててバッと彼から離れると、くらっと視界が歪む。
そのままスッと体の力が抜けてしまった。
「初花っ……!」
颯馬さんの声が遠く聞こえる。
彼は、私の腰を支えてくれているよう。
どうしてだろう――櫻田くんに触られたら怖くてたまらなかったのに、颯馬さんの手は温かくて、心地よくて――。
そして、スッと私の意識は遠のいた。