マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました

***

颯馬さんが運転する黒いSUVは、今日も居心地が良い。。
座り心地もだが、彼の運転技術の賜物でもある。
彼が住んでいるのは、会社から徒歩圏内のタワーマンションの最上階。
築年数が浅く、綺麗なマンションだ。
そして、途中ですれ違った住民はこういう場所にも相応しい気品のある人たち。
私のように、会社から三駅も離れた場所にある駅から遠いアパートに住んでいるような人とは違う。
やはり、彼は――住んでいる世界が違う人。
彼を知れば知るほど、自分とは全然違うのだと思い知らされるようだ。

「初花。大丈夫か?」

信号が赤になれば、私の方を見て尋ねる。

「え……?」
「さっきからぼんやりとしているように見えて。家で休む方が良いだろうが、もし車酔いとかしたなら、どこかで休むぞ」

キラキラとしていて、華やかなだけでなく、優しい。
私なんかにも。

「いえ。ただ、ひとつだけ……良いですか?」
「どうした?」

青信号になり、発進する。

「あの、私……颯馬さんの恋人のフリするの、やめた方が良いと思うんです」

エンジン音で消えそうな声である。
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