マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「……理由、聞いてもいい?」
けれど、どれほど小さい声でも拾ってしまうのが彼である。
運転に集中して、前を見ながらそう尋ねられると、私は指に毛先を絡めた。
「だって、今日みたいに迷惑をかけてしまったら……私なんかより、営業部にいる誰かに声を掛けてみた方が……見た目だって、あの人たちの方が華やかで、私なんか」
あぁ、まずい、泣いちゃうかも。
偽装の恋人なのに、彼の隣にいる自分はまるでドラマの主人公のようだった。
颯馬さんだけでなく、白鳥さんのように綺麗な人とも仲良くしてもらえて。
だけど、私の本質というものは変わらないのだ。
きっと、あの夢を見たのも、天文的な確率で櫻田くんと出会ったのだって『うぬぼれるな』って神様が私に釘を刺しに来たのかもしれない。
私がマッチングアプリでの待ち合わせをバックレたことに対する罰というのは、もしかしたら――。
悪いことばかりが頭を過って、ネガティブな言葉を続けようとしたら「あのさ」と言葉を遮った。
「初花ってさ、なんでそんなに自己評価低いの?」
「え、だ、だって……私なんて」
「内勤でも見た目はいつもちゃんとしてて、飯だって自分で毎日手作り。誰にでも丁寧にして、動物が好きで、仕事も真面目にしてる。あと、夢中になれる趣味もある。ただ、倒れるまでやるのは褒めてないけど。これで、どこが卑下する必要があるわけ?」
彼の言葉は、マイナスな私の言葉を覆すものばかりだった。