マッチングアプリの待ち合わせ相手がまさかの営業部エース御曹司で思わずバックレたら、見合いを断るための偽装恋人を頼まれてしまいました
「たまに、こっち見てる人がいるなって……でも、私、声小さいし、結衣……あっ、同僚なんですけど。話してる時に変だったのかなって」
中学校の教室で向けられていた視線のように思っていたから、悪いようにしか考えていなかった。
「違う。あれ、話しかけるタイミング見てただけ」
「タイミングを……?」
「あぁ。最近は白鳥と仲良くなって、余計に声かけやすくなったみたいだが」
颯馬さんから言われることは、知らないことばかりだ。
たしかに、白鳥さんと話していると他の営業部の人達と話すことも増えた。
みんな、白鳥さんと話したいんだな――その程度にしか思っていなかった。
「俺としては気に入らないけど」
「す、すみません……そう、ですよね。白鳥さん、良い人ですから……」
「いや、そうじゃなくて。他の奴が初花と話そうと狙ってるのが」
真面目な顔をしてそう言われると、本気で言っているようで顔に熱が集まる。
「もし、初花が俺と付き合ってるフリやめようって言うなら、俺もアイツらと一緒になるわけだ」
「一緒……?」
小首を傾げれば、ふっ、と小さく笑った。
「俺も、初花を狙う一人になる」
颯馬さんが、私を……?
耳には届いているけれど、頭で整理するには時間がかかった。
そして、整理し終わったころには――ボウッと頭から煙が出そうなくらい顔が熱くなった。