魔法より、君に恋をする。
三年棟へ着く。

 カイルは教室にはいなかった。

「どこだろ」

「昼なら訓練場じゃない?」

 セシルが言う。

「三年生って昼も訓練するの?」

「クロフォード先輩ならやりそう」

「確かに」

「僕もそう思う」

 三人で訓練場へ向かう。

 予想は当たった。

 カイルは一人で剣を振っていた。

 黒髪が汗で額に張りついている。

 無駄のない動き。

 一振りごとに空気が鋭く切れる。

「格好いい」

 リリアが言った。

「リリア」

 セシルが呼ぶ。

「何?」

「いや、何でもない」

「セシルまでそれ言うようになった」

「……昨日より意味が分かるようになっただけ」

「?」

 ノアが苦笑する。

「セシル、強く生きようね」

「ありがとう」

 カイルがこちらに気づいた。

 剣を止める。

「何してる」

「お土産」

 リリアが紙袋を掲げた。

「……本当に買ったのか」

「買うって言ったでしょ?」

「そうだが」

 カイルが近づいてくる。

 リリアは紙袋を渡した。

「はい」

「……猫?」

「包装紙だけ」

「なぜ猫にした」

「似合うから」

「どこがだ」

「昨日いたし」

「いたのは俺じゃない。猫だ」

「でも好きでしょ?」

「……」

 カイルは反論しなかった。

「中身は普通です。ナッツとチョコの焼き菓子」

「ありがとう」

「食べてね」

「ああ」

 紙袋を持つカイルの表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。

「嬉しい?」

「……まあ」

「よかった」

 リリアが笑う。

 カイルは目を逸らした。

 そのやり取りを見ていたノアが、ぼそりと言う。

「強敵だなあ」

「誰が?」

「独り言」

「今日はみんな変」

 カイルがセシルを見る。

「アルヴェイン」

「はい?」

「選んだのか?」

「一緒に選びました」

「そうか」

「猫の置物を勧めたんですけどね」

「お前か」

「買わなかったのは私です」

 リリアが言う。

「ちょっと迷ったけど」

「迷うな」

 カイルが即答する。

 セシルが吹き出した。

「笑うな」

「すみません」

「絶対反省してないだろ」

「してません」

 カイルはため息をついた。

 けれど、怒ってはいなかった。

 リリアはそれを見て、少し嬉しくなる。

 昨日知ったカイルの顔を、今日も見られた。

     
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