魔法より、君に恋をする。
夜。

 ノアは一人で寮の廊下を歩いていた。

 明日。

 たった一日先。

 昔の自分なら、その言葉を信じなかった。

 次の日が来る保証なんてない。

 約束は破られる。

 守れなかった言葉だけが残る。

 だから先に死んだ方が楽だった。

 彼女がいなくなる瞬間を見るくらいなら、自分が先に消えればいい。

 ずっと、そう思っていた。

 けれど。

『明日も会えるよ』

 根拠なんてない。

 しかも最後に「たぶん」とつけられた。

 思い出して、少し笑う。

「本当、君らしいよ」

 明日が怖い。

 それでも。

 明日の約束が嬉しい。

 その二つは、同時に存在できるらしい。

 ノアは自室の扉へ手をかけた。

 明日は苺を食べる。

 それだけ。

 世界を救うわけでもない。

 運命を変えるわけでもない。

 ただ好きな女の子と、放課後に甘いものを食べる。

 今のノアには、それが何より大切だった。

 だから。

 今度は死ぬためではなく、生きて明日へ行く。

 そうやって少しずつ。

 何でもない日を増やしていけたらいい。
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