魔法より、君に恋をする。
「それで」

 リリアは閉じた魔導書へ手を置いた。

「この魔法は何なんですか?」

「諦めてなかったんだ」

 ルシアンが苦笑する。

「当たり前です」

「今日は閉じる約束だろ」

「見るのをやめただけです。質問しないとは言ってません」

 カイルが頭を押さえた。

「面倒な奴だな……」

「よく言われます」

「誰に?」

「最近はセシルに」

 その名前を聞いた時、カイルの眉がわずかに動いた。

「アルヴェインか」

「知ってるんですか?」

「一年で有名だからな」

「王子様です」

「……王子?」

「女の子だけど」

「それは知ってる」

 カイルが困惑している。

 ルシアンが横から説明した。

「《白銀の王子》って呼ばれてるんだよ」

「そういうことか」

「すごく格好いいですよ」

「……そうか」

 なぜか返事が少し固い。

 リリアは首を傾げた。

「何ですか?」

「何でもない」

「今日みんなそれ言う」

「何でもないからな」

「怪しい」

「何でも疑うな」

 言い合いながら、リリアは少し笑った。

 最初に会った時より、カイルとの距離がほんの少しだけ縮まった気がした。

 けれど。

 閉じた本の下にある魔法陣のことは、まだ頭から離れない。

「……十二本」

 無意識に呟いた。

 カイルの顔色が変わった。

 ルシアンの笑みも消えた。

 リリアは二人を見る。

「どうしました?」

「今、何て言った?」

 カイルが尋ねる。

「十二本。さっきの魔法陣、中心から線が十二本出てたから」

「……」

「それが何か?」

「いや」

 カイルが目を伏せる。

「何でもない」

 まただ。

 今度は追及しなかった。

 ただ、覚えておこうと思った。
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