魔法より、君に恋をする。
 学院へ戻った七人は。

 生徒会室へ入った。

 扉が閉まる。

 リリアは椅子へ座る。

「何?」

 ルシアンは机の前に立った。

「昨日、十三本目について調べた」

 全員の表情が変わる。

「分かったの?」

「少し」

「なら教えて」

「その前に」

 ルシアンはリリアを見る。

「君に聞きたい」

「何?」

「知りたい?」

 リリアが眉を寄せる。

「何を?」

「君自身について」

 静かになる。

「昨日の声が言ったこと」

『お前じゃない』

「僕が調べた記録は、おそらくそれに関係している」

「おそらく?」

「確証がない」

「……」

「欠損も多い。僕の推測も含まれる」

 ルシアンは目を逸らさない。

「だから、僕が勝手に君へ話していいものか迷っている」

 ノアが黙っている。

 アレンも。

 カイルも。

 四人の記憶を持つ者たちでさえ。

 口を挟まない。

「聞いたら」

 リリアが尋ねる。

「戻れない?」

「何に?」

「知らなかった時に」

「それはそうだね」

「怖いこと?」

「可能性はある」

「私、傷つく?」

「それも分からない」

「ルシアン先輩は話したい?」

 予想外の質問だったのか。

 ルシアンが少し目を見開く。

「僕?」

「うん」

「……話すべきだと思ってる」

「じゃあなんで聞くの?」

「君のことだから」

 短い答え。

「僕が決めるべきじゃない」

 リリアは黙った。

 机の下。

 自分の手を見る。

 少し怖い。

 知りたくない気持ちもある。

 このまま。

 リリア・アステルとして。

 何も知らずに過ごせたら。

 その方が楽なのかもしれない。

 でも。

「聞く」

 顔を上げた。

「リリア」

 ノアが呼ぶ。

「うん」

「本当に?」

「怖いよ」

 ノアが黙る。

「でも、私のことでしょ」

「そうだね」

「だったら知りたい」

 ルシアンを見る。

「全部」

「全部は、まだ僕にも分からない」

「分かってるところまで」

「……」

「そのあとどうするかは」

 リリアは自分の胸へ手を置いた。

「私が決める」

 ルシアンの紫の瞳が、静かに揺れた。

「分かった」

 机の上へ。

 一冊の古い記録を置く。

「じゃあ話そう」

 六人が。

 リリアの周りにいる。

 誰も代わりに答えない。

 誰も止めない。

 ただ。

 彼女が選んだことを。

 見守っている。

 ルシアンが記録を開いた。

「まず」

 最初の頁。

 そこにある文字を指す。

「君とは別に」

 リリアの心臓が鳴る。

「かつて、《リリア》と呼ばれた存在がいた」

 静寂。

 リリアは目を逸らさなかった。
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