魔法より、君に恋をする。
 放課後。

 剣術場では、木剣のぶつかる乾いた音が響いていた。

「アルヴェイン、次!」

「はい!」

 セシルは木剣を構える。

 相手は二年生。

 体格では向こうが上だったが、問題はない。

 一歩踏み込む。

 相手の剣を受け流し、懐へ入る。

 木剣の切っ先を喉元へ止めるまで、十秒もかからなかった。

「……参った」

「ありがとうございました」

 剣を下ろす。

 周囲から歓声が上がった。

「やっぱり強いなあ」

「一年だよね?」

「アルヴェイン家だし」

「今日も格好いい……」

 聞こえてくる声には慣れている。

 入学前から似たようなことは何度もあった。

 背が高い。

 髪が短い。

 剣が得意。

 男物に近い制服を選んでいる。

 それだけで「王子様みたい」と言われることも珍しくなかった。

 嫌ではない。

 けれど特別嬉しいわけでもなかった。

『セシル、すごく格好よかった』

 なのに。

 一人に言われた言葉だけは、今でも覚えている。

「……集中」

 自分に言い聞かせる。

「セシル先輩!」

 剣術部の女子生徒から声が飛ぶ。

「次、私とお願いします!」

「いいよ」

 木剣を構える。

 今は練習中だ。
< 67 / 284 >

この作品をシェア

pagetop