魔法より、君に恋をする。
第三資料室は、思っていたより小さかった。

 壁一面に本棚が並び、古い魔導書や研究資料が詰め込まれている。

「これどこ?」

 リリアは抱えていた辞典を見る。

「術式理論なら奥だ」

「詳しい」

「三年いるからな」

「私も三年後には迷わなくなるかな」

「無理だろう」

「即答」

 奥へ進む。

 目的の棚はすぐ見つかった。

 問題は。

「高い」

 一番上だった。

 リリアは辞典を持ち上げる。

 届かない。

 背伸びする。

 まだ届かない。

「……」

 もう一度。

 届かない。

「貸せ」

 後ろからカイルの腕が伸びた。

 リリアの手から辞典を取ると、簡単に棚へ戻す。

「便利」

「何が」

「身長」

「お前が小さいだけだ」

「153あります」

「小さい」

「あります」

「何と比べてる」

「私」

「基準がおかしい」

 振り返ろうとして、思ったよりカイルが近いことに気づいた。

 胸元が目の前にある。

 カイルも気づいたらしい。

 一歩下がった。

「……悪い」

「別に」

 リリアも離れる。

 以前、黒い石の影響で赤い月の幻を見た時には、もっと近かった。

 抱きしめられた。

 あの時は驚いたのに、不思議と嫌ではなかった。

 今思い出すと、少しだけ落ち着かない。

「リリア?」

 名前を呼ばれて顔を上げる。

「何でもないです」

「そうか」

「……今、名前で呼びましたね」

 カイルが固まった。

「前も呼んだ」

「危ない時だけ」

「そうだったか」

「はい」

「……気にするな」

「なんで?」

「意味はない」

「じゃあもう一回呼んで」

「嫌だ」

「意味ないならいいでしょ」

「嫌だ」

「ケチ」

 カイルが小さく息を吐く。

 けれど、少しだけ耳が赤かった。
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