呪われた忘却の魔女ですが、王太子が私を忘れてくれません
第十六話 残酷な結末
なんとなく落ち着かなくて、久しぶりに大がかりな掃除をした。軽い掃除はいつもしているけれど、それ以外の、もっと時間と集中の必要なものを中心に。たとえば、戸棚の奥に仕舞い込んだ薬瓶をごっそり取り出して隅々まで丁寧に埃を払ったり、裏庭にぼうぼうと生えた丈高い草を刈ったり、はたまた、滅多に使うことのない食器類をひとつひとつ丁寧に磨いたり。天気の良い日には、枕カバーやシーツ、テーブルクロスを洗濯して庭いっぱいにはためかせもした。それから雑然とした倉庫の整理も息を切らしながらこつこつとこなしたり、薬の補充と発注も済ませたり、小川の端にたまった花筏を回収して小さな山を作ったり。毎日何かしらひとつないしはふたつずつこなし、それらが終わると、フィオナは愛用のバスケットを片手に近場の町へと出かける。そこまでが最近の彼女のルーティンだった。
町には小さな教会があり、柔和な顔をした初老の神父が一人いる。週末開かれるミサの時には多くの信徒が訪れるけれど、普段は殆ど人の姿はなく、それが却ってフィオナには都合が良かった。一人の方が、誰にも邪魔をされずに、心行くまでゆっくりと祈ることが出来るから。身廊の両側に規則正しく並べられたチャーチチェアに腰掛けて、或いは、荘厳で神聖な祭壇の前に跪いて。両手を胸の前で組み、目を瞑って。そうする度にいつも、瞼の裏の暗闇にはシリウスの笑顔が鮮明に浮かんだ。どうか無事でありますように。またあの笑顔を見ることが出来ますように。何度も何度も飽くことなく祈り続け、そしてそうしながら、不安に潰れそうな心を必死に落ち着ける。神に祈るのは彼の為でもあり、同時に、フィオナ自身の為でもあった。何かをしていないと、恐怖と不安で頭の中が、胸の中がいっぱいになってしまうから。大がかりな掃除も、町への散歩も、教会での祈りも、だからそれはフィオナにとって一種の精神安定剤のようなものだった。
「おや、今日もお祈りにいらしていたのですね」
声をかけられ、フィオナはゆっくりと瞼を開いてかぶりを上げる。側廊の壁に嵌め込まれたランセット窓から燦々と注がれる陽光はとても穏やかで、静謐な堂内はとても明るく、あたたかいい。ステンドグラスの落とす鮮やかかな光が、四角いタイルの敷き詰められた身廊に幾何学的な模様を描いている。その上に、いつの間にか一人の男が、朗らかな笑みを湛えて立っていた。立襟の黒いキャソック、両肩を覆うように巻かれた同色のカズラ、丁寧に撫でつけられた――所々に白毛の目立つ――短い髪の毛、皺の刻まれた柔らかそうな顔。
「なんだか落ち着かなくて」
軽く会釈をしてから苦笑交じりにそう答えると、神父は「そうですか」と穏やかな口調で返しながらおっとりと顔を綻ばせ、そうしてアプスの中央に鎮座する聖像へと目を向けた。その横顔につられ、フィオナもまた祭壇へと視線を移す。アプスを囲うように設けられた幾つものランセット窓、その上に嵌め込まれた大小様々な形の多弁装飾。ガラスのひとつひとつには丁寧に花や天使、或いは聖人が描かれ、真昼の日差しを浴びて淡く輝いている。
「私も共に、神の加護をお祈りいたしましょう」
そう言って、フィオナの傍らで祈りを捧げ始めた神父に倣い、フィオナもまた両手を胸の前で合わせ、再びゆっくりと目を閉ざす。何について祈っているのか、誰のことについて祈っているのか。神父は何も知らない。知らないけれど、二人で祈ればきっと、神様へ願いがいっそう届くような気がして、フィオナはそっと肩の力を抜いた。
きっと大丈夫だ。神父様も祈ってくれているのだから。握り合わせた手に、少しばかり力をこめながら、フィオナは思う。きっと大丈夫だ。きっと大丈夫。何度も何度も心の中で繰り返し、その度に、睫毛がこまかく震える感覚がする。大丈夫。神様は我々の味方なのだから。シリウスやアレンや、他の騎士団員たちを、きっと護ってくれているはず。だから大丈夫。絶対に――。
討伐作戦の決行日は三日前だったが、魔獣がどうなったのか、被害はあったのか、アレンやシリウスはどうなったのか、未だに何の報せもない。いつもは買わない新聞を手当たり次第購入して隅から隅まで読み漁ってみたけれど、討伐のことについては何ひとつ、どんな些細な内容すらどこにも記載されていなかった。まるで箝口令でも敷かれているみたいに。
だから余計に、不安が増してしまう。どろどろとしたどす黒いものに、心をじわじわと蝕まれてゆく。その感覚がひどく恐ろしく、幾度も振り払おうとしたけれど、それは執拗にフィオナの身体にしがみついて、少しも薄れようとしない。それどころか時間が経てば経つほど存在感が増し、不安が募れば募るほど、それはありありと自身の存在を主張する。憂虞し、怯えるフィオナを、まるで嘲笑ってでもいるみたいに。
もちろんあの夜――決行日を告げられたあの夜――以降、シリウスには一度も会っていない。後処理で忙しいのだろう、とか、たまっている仕事があるのだろう、とか。なるべくそう考えるようにしているけれど、しかしどうしても、頭の片隅に不穏な影がちらついてしまう。もしかしたら大きな被害を受けたのではないだろうか。もしかしたら彼の身に何かあったのではないだろうか。もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら――。
慌ててかぶりを振り、フィオナは頭の中から余計な考えを追い払うと、神父に一言礼を告げてから教会を後にした。
所々雑草が生えた古い階段の途中で足をとめ、フィオナはそっと頭上を仰ぎ見る。明け方に降っていた小雨がまるで嘘のように、そこには雲一つない晴天が見渡す限りいっぱいに広がっている。立派な翼を動かして自由に飛び回る二羽の白鳩。愛らしい囀りを披露する小さな雀たち。階段の脇に植えられた灌木にびっしりと咲いたマゼンタ色の花。仄かに薫る甘くやさしい香り。
階段から見下ろす町の様子は、いつものように活気に溢れ、買い物をする人や噴水に腰掛けて日向ぼっこをする人、元気よく駆け回る子どもたちで賑わっていた。平素と何も変わらない。何も。何ひとつ。魔獣の討伐作戦があったなんてまるで知らない、平穏な光景。それに安堵すればいいのかどうか、フィオナには分からなかった。この幸福と笑顔に満ち溢れた日常を、シリウスは護りたかったのだろう。ひとりの騎士として。そしてこの国の未来を背負う王太子として。
陽光であたためられた澄んだ空気を肺いっぱい吸い込んで、それを細く長く吐き出し、フィオナはゆっくりとひとつ瞬いてから、階段を駆け下りる。今日は教会での祈りの他に、町で食材を買い込む必要もあった。林檎はまだ少し残っているけれど、そればかりを食べていてはさすがに栄養が偏ってしまう。
イチゴ、ルバーブ、アスパラ、にんじん、玉ねぎ、ターニップ、ラムソン、それからハーブティーにする用のネトルと、神聖なハーブとして名高いフェンネル。肉も魚もしっかり買って、店を一通り回り終えた頃には、バスケットの中はいっぱいだった。ついでにパンも買おうと思っていたけれど、これでは詰め込められそうにない。何より腕が壊れてしまいそうだ。
案の定、家まで持ち帰るのには随分と苦労した。重たいので何度も足をとめ、少し休憩を挟み、その度に一気に買い込んでしまったことを後悔する。道中は、その繰り返しだった。そのせいで、行きよりも帰りの方がかなり時間がかかってしまい、鬱蒼とした森の一本道を抜けた頃には、身体中が疲労で重たくなっていた。足を一歩踏み出すことさえきつくてたまらない。
しかし、そんなフィオナの目に見覚えのある姿が飛び込んできた瞬間、彼女の足は途端に軽さを取り戻した。開けた空間を突っ切るようにして伸びる土道。その先に建つ平屋の玄関口に、騎士団の制服をきっちりと身に着けたアレンがひとり佇んでいた。
「アレン様!」
ついさっきまで身体に伸し掛かっていた疲労は、いったいどこへいってしまったのか。バスケットは相も変わらず重たいけれど、フィオナはそれをすっかり忘れたように駆け出し、アレンのもとへ急いで走り寄る。
目の前で立ち止まり、走ったせいで少し乱れた呼吸を整えながら、フィオナは頭のてっぺんから足の先まで、アレンの身体をしっかりと検める。もちろん服の上からでは分からない部分も多いけれど、肌の露出した場所には包帯もガーゼも見当たらず、フィオナは取り敢えずほっと胸を撫で下ろす。愛馬に乗ってここまで来たのなら、外出出来るだけの体力はあるのだろう。
「ご無事で何よりです」
安堵の笑みを浮かべながらアレンのかんばせを見上げる。しかし彼は、その視線から逃げるように、僅かに目を逸らした。いつものアレンでは、決してそんなことはしないはずなのに。
その瞬間、フィオナの胸に蟠っていた不安が、一気に膨れ上がる。アレンの様子が、いつもと違う。何故。どうして。そんな疑問は、ぐるぐると頭の中を駆け回った末、ひとつの答えに辿り着く。否が応でも。必死に抗おうとしても。必ずそこに行き着いてしまう。
「で、殿下は……ご無事なんです、よね」
その不安を、恐怖を、どろどろとしたどす黒いものたちを否定してほしくて、フィオナは縋るようにアレンの双眸を見つめる。けれども彼は、何も答えない。向けられる眼差しを受け止めようともしない。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかないと思ったのだろう。暫しの逡巡の後、意を決したらしいアレンが、悲痛な面持ちでフィオナを見下ろし、そうしてゆっくりと口を開いた。
「実は、殿下が――」
町には小さな教会があり、柔和な顔をした初老の神父が一人いる。週末開かれるミサの時には多くの信徒が訪れるけれど、普段は殆ど人の姿はなく、それが却ってフィオナには都合が良かった。一人の方が、誰にも邪魔をされずに、心行くまでゆっくりと祈ることが出来るから。身廊の両側に規則正しく並べられたチャーチチェアに腰掛けて、或いは、荘厳で神聖な祭壇の前に跪いて。両手を胸の前で組み、目を瞑って。そうする度にいつも、瞼の裏の暗闇にはシリウスの笑顔が鮮明に浮かんだ。どうか無事でありますように。またあの笑顔を見ることが出来ますように。何度も何度も飽くことなく祈り続け、そしてそうしながら、不安に潰れそうな心を必死に落ち着ける。神に祈るのは彼の為でもあり、同時に、フィオナ自身の為でもあった。何かをしていないと、恐怖と不安で頭の中が、胸の中がいっぱいになってしまうから。大がかりな掃除も、町への散歩も、教会での祈りも、だからそれはフィオナにとって一種の精神安定剤のようなものだった。
「おや、今日もお祈りにいらしていたのですね」
声をかけられ、フィオナはゆっくりと瞼を開いてかぶりを上げる。側廊の壁に嵌め込まれたランセット窓から燦々と注がれる陽光はとても穏やかで、静謐な堂内はとても明るく、あたたかいい。ステンドグラスの落とす鮮やかかな光が、四角いタイルの敷き詰められた身廊に幾何学的な模様を描いている。その上に、いつの間にか一人の男が、朗らかな笑みを湛えて立っていた。立襟の黒いキャソック、両肩を覆うように巻かれた同色のカズラ、丁寧に撫でつけられた――所々に白毛の目立つ――短い髪の毛、皺の刻まれた柔らかそうな顔。
「なんだか落ち着かなくて」
軽く会釈をしてから苦笑交じりにそう答えると、神父は「そうですか」と穏やかな口調で返しながらおっとりと顔を綻ばせ、そうしてアプスの中央に鎮座する聖像へと目を向けた。その横顔につられ、フィオナもまた祭壇へと視線を移す。アプスを囲うように設けられた幾つものランセット窓、その上に嵌め込まれた大小様々な形の多弁装飾。ガラスのひとつひとつには丁寧に花や天使、或いは聖人が描かれ、真昼の日差しを浴びて淡く輝いている。
「私も共に、神の加護をお祈りいたしましょう」
そう言って、フィオナの傍らで祈りを捧げ始めた神父に倣い、フィオナもまた両手を胸の前で合わせ、再びゆっくりと目を閉ざす。何について祈っているのか、誰のことについて祈っているのか。神父は何も知らない。知らないけれど、二人で祈ればきっと、神様へ願いがいっそう届くような気がして、フィオナはそっと肩の力を抜いた。
きっと大丈夫だ。神父様も祈ってくれているのだから。握り合わせた手に、少しばかり力をこめながら、フィオナは思う。きっと大丈夫だ。きっと大丈夫。何度も何度も心の中で繰り返し、その度に、睫毛がこまかく震える感覚がする。大丈夫。神様は我々の味方なのだから。シリウスやアレンや、他の騎士団員たちを、きっと護ってくれているはず。だから大丈夫。絶対に――。
討伐作戦の決行日は三日前だったが、魔獣がどうなったのか、被害はあったのか、アレンやシリウスはどうなったのか、未だに何の報せもない。いつもは買わない新聞を手当たり次第購入して隅から隅まで読み漁ってみたけれど、討伐のことについては何ひとつ、どんな些細な内容すらどこにも記載されていなかった。まるで箝口令でも敷かれているみたいに。
だから余計に、不安が増してしまう。どろどろとしたどす黒いものに、心をじわじわと蝕まれてゆく。その感覚がひどく恐ろしく、幾度も振り払おうとしたけれど、それは執拗にフィオナの身体にしがみついて、少しも薄れようとしない。それどころか時間が経てば経つほど存在感が増し、不安が募れば募るほど、それはありありと自身の存在を主張する。憂虞し、怯えるフィオナを、まるで嘲笑ってでもいるみたいに。
もちろんあの夜――決行日を告げられたあの夜――以降、シリウスには一度も会っていない。後処理で忙しいのだろう、とか、たまっている仕事があるのだろう、とか。なるべくそう考えるようにしているけれど、しかしどうしても、頭の片隅に不穏な影がちらついてしまう。もしかしたら大きな被害を受けたのではないだろうか。もしかしたら彼の身に何かあったのではないだろうか。もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら――。
慌ててかぶりを振り、フィオナは頭の中から余計な考えを追い払うと、神父に一言礼を告げてから教会を後にした。
所々雑草が生えた古い階段の途中で足をとめ、フィオナはそっと頭上を仰ぎ見る。明け方に降っていた小雨がまるで嘘のように、そこには雲一つない晴天が見渡す限りいっぱいに広がっている。立派な翼を動かして自由に飛び回る二羽の白鳩。愛らしい囀りを披露する小さな雀たち。階段の脇に植えられた灌木にびっしりと咲いたマゼンタ色の花。仄かに薫る甘くやさしい香り。
階段から見下ろす町の様子は、いつものように活気に溢れ、買い物をする人や噴水に腰掛けて日向ぼっこをする人、元気よく駆け回る子どもたちで賑わっていた。平素と何も変わらない。何も。何ひとつ。魔獣の討伐作戦があったなんてまるで知らない、平穏な光景。それに安堵すればいいのかどうか、フィオナには分からなかった。この幸福と笑顔に満ち溢れた日常を、シリウスは護りたかったのだろう。ひとりの騎士として。そしてこの国の未来を背負う王太子として。
陽光であたためられた澄んだ空気を肺いっぱい吸い込んで、それを細く長く吐き出し、フィオナはゆっくりとひとつ瞬いてから、階段を駆け下りる。今日は教会での祈りの他に、町で食材を買い込む必要もあった。林檎はまだ少し残っているけれど、そればかりを食べていてはさすがに栄養が偏ってしまう。
イチゴ、ルバーブ、アスパラ、にんじん、玉ねぎ、ターニップ、ラムソン、それからハーブティーにする用のネトルと、神聖なハーブとして名高いフェンネル。肉も魚もしっかり買って、店を一通り回り終えた頃には、バスケットの中はいっぱいだった。ついでにパンも買おうと思っていたけれど、これでは詰め込められそうにない。何より腕が壊れてしまいそうだ。
案の定、家まで持ち帰るのには随分と苦労した。重たいので何度も足をとめ、少し休憩を挟み、その度に一気に買い込んでしまったことを後悔する。道中は、その繰り返しだった。そのせいで、行きよりも帰りの方がかなり時間がかかってしまい、鬱蒼とした森の一本道を抜けた頃には、身体中が疲労で重たくなっていた。足を一歩踏み出すことさえきつくてたまらない。
しかし、そんなフィオナの目に見覚えのある姿が飛び込んできた瞬間、彼女の足は途端に軽さを取り戻した。開けた空間を突っ切るようにして伸びる土道。その先に建つ平屋の玄関口に、騎士団の制服をきっちりと身に着けたアレンがひとり佇んでいた。
「アレン様!」
ついさっきまで身体に伸し掛かっていた疲労は、いったいどこへいってしまったのか。バスケットは相も変わらず重たいけれど、フィオナはそれをすっかり忘れたように駆け出し、アレンのもとへ急いで走り寄る。
目の前で立ち止まり、走ったせいで少し乱れた呼吸を整えながら、フィオナは頭のてっぺんから足の先まで、アレンの身体をしっかりと検める。もちろん服の上からでは分からない部分も多いけれど、肌の露出した場所には包帯もガーゼも見当たらず、フィオナは取り敢えずほっと胸を撫で下ろす。愛馬に乗ってここまで来たのなら、外出出来るだけの体力はあるのだろう。
「ご無事で何よりです」
安堵の笑みを浮かべながらアレンのかんばせを見上げる。しかし彼は、その視線から逃げるように、僅かに目を逸らした。いつものアレンでは、決してそんなことはしないはずなのに。
その瞬間、フィオナの胸に蟠っていた不安が、一気に膨れ上がる。アレンの様子が、いつもと違う。何故。どうして。そんな疑問は、ぐるぐると頭の中を駆け回った末、ひとつの答えに辿り着く。否が応でも。必死に抗おうとしても。必ずそこに行き着いてしまう。
「で、殿下は……ご無事なんです、よね」
その不安を、恐怖を、どろどろとしたどす黒いものたちを否定してほしくて、フィオナは縋るようにアレンの双眸を見つめる。けれども彼は、何も答えない。向けられる眼差しを受け止めようともしない。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかないと思ったのだろう。暫しの逡巡の後、意を決したらしいアレンが、悲痛な面持ちでフィオナを見下ろし、そうしてゆっくりと口を開いた。
「実は、殿下が――」