【秘密の溺愛シリーズ】 紳士な社長の秘密を知ったら、独占欲強火の愛で娶られました
『断るべきだわ』

 頭の中で理性が告げる。けれど心は真逆を叫んでいる。

『このチャンスを逃してはだめよ』

 父のたくらみから逃れるためには、これくらい思いきった作戦も必要かもしれない。

 頭の中でグラグラと天秤が左右に揺れる。

「俺を利用したらいい。俺の肩書ならおまえの父親の体面も保たれるだろう」

 社長の指摘が的を射ていて、思わずうなった。

 自社の繁栄しか頭にない父には、私の結婚相手に重要なのは、会社に利益をもたらすかどうかだけだ。それでいくと大企業の御曹司かつ代表取締役社長という肩書を持つこの人なら、父もケチはつけられない。婿取りも諦めるしかない。

 それに、戸籍にバツがつけば結婚不適合だと主張できる。〝立派な〟お家柄の人にも嫌がられるだろう。つまり父が望むような縁談は来ない。わずらわしい縁談話がなくなれば、存分に仕事に打ち込める。

「いい……かも」

「取引成立だな」

「え!」

 顔を上げると社長が満足げに口の端を持ち上げている。 頭でつぶやいたつもりが声に出ていたらしい。

 慌てて訂正しようとしたら、社長がいきなり私の手を引いて歩きだした。

「社長っ、どこへ行くんですか⁉」

 私の問いかけに答えることなく、社長はそのままオフィスを出た。



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