【秘密の溺愛シリーズ】 紳士な社長の秘密を知ったら、独占欲強火の愛で娶られました
 彼は立ち尽くしている私のところまでやってくると、にこりと微笑む。

「そういうことだから」

 どういうことですか!

 怒りたいのに、衝撃のあまり声が出ない。

「おまえの父親から『娘をよろしくお願いします』と言われたぞ」

 軽くめまいがして膝からくずおれそうになったけれど、社長に二の腕を掴まれて、どうにかへたり込まずに済んだ。
 予想していた通りではあるが、それはそれで現金すぎると複雑になる。結局父が娘の結婚相手に望むのは、自分にとって利益になるかどうかなのだ。

「目的のひとつは果たせそうだな」

 社長が完璧な微笑みを浮かべると、スマホを返してきた。

 昨日までの私なら、この顔に見惚れたかもしれない。けれどその面の皮の下に腹黒さが透けて見える今、まったくそんな気にはなれない。やっと戻ってきたスマホを握りしめ、私は自分に『落ち着くのよ』と言い聞かせる。

 私にはもう、彼の計略に乗るしか道は残されていない。もしここで社長と結婚しなかったら、父が私を連れ戻しにくるだろう。大物を取り逃がしたのだから、今度こそ見合いをしろと。そうなってもこの社長は、私をかばったりしない。真摯な笑顔で『お幸せに』と見送るのが目に見えている。

 一度大きく深呼吸をする。腹をくくるしかない。

「わかりました。契約します」

 社長が満足そうに微笑む。私は真剣な目で続きを言う。

「ただし、きちんとした契約書を作ってください」

「もちろんだ」

 彼は悠然と微笑んだ。
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