【秘密の溺愛シリーズ】 紳士な社長の秘密を知ったら、独占欲強火の愛で娶られました
 それからは契約内容の詳細について話し合った。

『必要に応じて夫婦役を演じる』『社内では関係は秘密』『同意のない接触禁止』『ほかに好きな相手ができたら即関係解消』など、〝必要時以外は赤の他人〟というわけだ。契約期間は一年間。必要経費はすべて社長持ちだ。

 最後の最後まで揉めたのは、同居するかどうかだ。

 私は必要ないと訴えたが、社長は『今のままでは夫婦どころか恋人同士にすら見えない』と言う。リアリティを持たせるためには、もっと互いのことを知らないといけない。それを短期間で達成しようとしたら、同居が一番効率がいいそうだ。

「何度も言うが、これはただの契約だ。俺はただの同居人に手を出すほど飢えてはいない」

 確かに社長が大変モテるのは、嫌というほど知っている。

「それともなにか? おまえが俺を襲うのか?」

「なっ……そんなことしません!」

「なら問題ない」

 解決、とばかりに婚前契約書とは別の紙を、こちらに差し出してきた。婚姻届だ。

「契約書にサインを」

 私は婚姻届に添えられたペンを手に取り、震える手で自分の氏名と住所を書いた。

 ふたりで記入できる箇所はすべて埋めた。あとは証人欄を残すのみ。誰に頼むのかと聞いたら、社長は『当てがある』という。私としては、社内にばれなければ誰でもいい。私の方は実家に戻らなければ親戚も友人もいないため、社長に任せることにした。
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