鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
――今から六年前の冬。当時大学生だった私は、ファミレスのアルバイトの帰路を自転車で急いでいた。
その日は深夜スタッフが急な発熱で休んだため、夜のスタッフ人数が少なかった。そんな時に限って、団体のお客さんが来たりするものだ。バイト上がりの時間は過ぎていたけれど、忙しい波が過ぎるまではと残業していたら、思いのほか帰りが遅くなってしまった。
翌日は一コマ目から授業が入っている。早く帰らなければと焦りが募る。
近道をしようと大通りから細い道に入り、緩やかな坂道を通り抜けようとしたとき、雨上がりのマンホールでタイヤがスリップし、自転車ごと転倒してしまった。
幸いヘルメットを被っていたので頭は打たなかったけれど、他はどこを打ったかわからないほど体のあちこちが痛くて声も出せない。
深夜帯のため人通りはない。
どうにか自力で起き上がろうとしたところで、足に激痛が走った。
『痛っ……!』
もしかして折れてる?
スーッと血の気が引いた。激痛はなかなか治まらず、道路にうずくまったまま動けない。
もしもこのまま誰にも気づかれなかったら? 朝までここで倒れたままだったらどうなるの?
アスファルトの冷たさにブルリと震える。『凍死』という言葉が脳裏をよぎった。
痛みと不安で泣き出しそうになったとき、駆け寄ってくる足音が聞こえた。
『大丈夫か』
若い男性の声がして、その人が私のそばにしゃがみこんだ。
『自転車で転んだのか?』
喉から声を絞り出し、どうにか『はい』と答える。