鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
『痛いところは?』
うなずくと『どこが』と尋ねられたけれど、明確に答えられない。うなるようにして『左』とだけ口にする。
『左側だな、わかった。俺は一応医師だ。少し触れもいいか?』
『医師』という言葉を聞いた瞬間、一気に安堵した。
すばやく私の全身をチェックした後、彼はおもむろにスマホを取り出した。
『救急です。負傷者は二十歳前後の女性、自転車での転倒で痛みを訴えています。ヘルメットは着用しており、ABCDは安定です』
救急車を呼んだのだとわかり、私は内心怖くなった。もしかしたら自分が考えているより重症なのかもしれない。
電話を切った彼は、無言で震えている私に自分が着ていたダウンコートを掛けてくれた。
『大丈夫だ』
安定した低い声で淡々と言われ、徐々に気持ちが落ち着いてきた。街灯に照らされた彼の顔は、こんな非常事態でもわかるほど美形にもかかわらず、真顔で平然としている。そのときの私にとってそれはかえって『たいした症状ではない』という安心感をもたらしてくれた。
そうしているうちに救急車が到着し、救急隊によって私は救急車に収容される。その間彼は、救急隊員とやり取りをしていた。私の状況を説明してくれていたのだと思う。
救急車のバックドアが閉まったところで、その男性とは別れた。
その後運ばれた病院で色々と検査をした結果、全身打撲と足首の捻挫という診断が下りた。頭部も含め、骨折や異常は見られなかった。
心の底から安堵したところで、私は助けてくれた男性にひと言もお礼を言っていないと気づいた。いつかどこかで会えたら、そのときは必ずお礼を言うのだと心に誓った――。
うなずくと『どこが』と尋ねられたけれど、明確に答えられない。うなるようにして『左』とだけ口にする。
『左側だな、わかった。俺は一応医師だ。少し触れもいいか?』
『医師』という言葉を聞いた瞬間、一気に安堵した。
すばやく私の全身をチェックした後、彼はおもむろにスマホを取り出した。
『救急です。負傷者は二十歳前後の女性、自転車での転倒で痛みを訴えています。ヘルメットは着用しており、ABCDは安定です』
救急車を呼んだのだとわかり、私は内心怖くなった。もしかしたら自分が考えているより重症なのかもしれない。
電話を切った彼は、無言で震えている私に自分が着ていたダウンコートを掛けてくれた。
『大丈夫だ』
安定した低い声で淡々と言われ、徐々に気持ちが落ち着いてきた。街灯に照らされた彼の顔は、こんな非常事態でもわかるほど美形にもかかわらず、真顔で平然としている。そのときの私にとってそれはかえって『たいした症状ではない』という安心感をもたらしてくれた。
そうしているうちに救急車が到着し、救急隊によって私は救急車に収容される。その間彼は、救急隊員とやり取りをしていた。私の状況を説明してくれていたのだと思う。
救急車のバックドアが閉まったところで、その男性とは別れた。
その後運ばれた病院で色々と検査をした結果、全身打撲と足首の捻挫という診断が下りた。頭部も含め、骨折や異常は見られなかった。
心の底から安堵したところで、私は助けてくれた男性にひと言もお礼を言っていないと気づいた。いつかどこかで会えたら、そのときは必ずお礼を言うのだと心に誓った――。